日本は同調圧力のかかった横並び文化の国とも言われ、個性の強い人にとって生きづらい国かもしれません。
自閉症スペクトラム(ASD)や、注意欠陥・多動性障害(ADHD)など、発達障害がある人はコミュニケーションが苦手です。
人に共感したり、場の空気を読んだり、人との距離感を掴む事に困難さを抱えていて、周囲からは「変わった人」として見られることもしばしば。
それなら個性や多様性が尊重されている国、アメリカではどうでしょうか。
発達障害をもった子どもやその親にどんなサポートや選択肢があるのか、日本の横並び文化の問題点や意外なメリットについても触れていきたいと思います。
発達障害がある子どもは海外の方が生きやすいのか
アメリカにおけるADHDと診断された子どもの数
2016年の調査では、全体の9.4%の子どもがADHDと診断されたことがあることが分かっています。
2~5歳 | 約388,000人 |
6~11歳 | 約2,400,000人 |
12~17歳 | 約3,300,000人 |
日本においても10人に1人の子どもがADHDだと言われていますので、アメリカでも同じぐらいの比率だと言えますね。
ASD(自閉症スペクトラム)は、2008年の調査で44人に1人の割合で診断されています。
選べる学校のスタイル
アメリカでは子どもを通常の小学校や中学校に通わせる他に、次のような選択肢があります。
special schooling | 中等度の学習困難や重度の学習障害などに配慮された学校 |
specialist units | 通常の学校に付属された特別支援クラス |
private and residential schools | 重度のASDの子どものための住居型学校(自室が与えられる) |
home schooling | 自宅でABA(応用行動分析)などのセラピーを受ける |
private and residential schools(住居型学校)の費用は自治体が負担してくれるほか、ABAのセラピーにもボランティアの方が来てくれたりするなど、地域によって支えられている感じがします。
特別支援クラスも、慣れるまでは半日登校でよいなど柔軟に対応してくれる学校が多いそうです。そのあたりもアメリカらしいですね。
進むインクルーシブ教育
インクルーシブ教育という言葉を聞いたことがあるでしょうか。障害のある子もない子も同じ教室で一緒に学ぶしくみです。
設備や教師の増員のためにコストがかかるというデメリットがありますが、アメリカを含め多くの国々で積極的に取り組みが進められています。
日本でも2012年には文部科学省がインクルーシブについて方針を発表しましたが、まだあまり広まっていないのが現状のようです。
■インクルーシブ教育のメリット
【障害がない子どもたち】 | 【障害のある子どもたち】 |
障害に対して偏見や差別を持ちにくくなる | コミュニケーション能力が高まる |
障害についての知識が増え、接し方を学べる | 実社会に近い生活ができる |
多様性への理解や思いやりの心が育つ | 自宅のある地域の学校で学べる |
障害のある子には、それぞれの障害にあわせた配慮や特別な支援が行われます。
「平等」であることが大切とされる日本では快く思わない人もいるかもしれませんね。
「ずるい」「不公平」ではなく、その配慮や支援があってはじめて「公平」になる(決して優遇ではない)ということを障害のない子には学んでほしいと思います。
インクルーシブ教育について詳しく知りたい方は、こちらの動画がおすすめです。(アメリカではなくフィンランドのものですが)
個性を尊重するマインド
移民が多く、多国籍な国では日本のように「みんなと同じだと安心する」というマインドはありません。肌の色、髪の色、着る物、食の好みにおいても元々違っているため、むしろ「違うのが当たり前」です。
その中でより個性を出して、いかに目立つか。それが大切なのです。
ADSDの好奇心や行動力、ASDのこだわりや集中力が生かされる場面が沢山ありそうですね。
少しくらい場にそぐわないことを言ってしまっても、笑い飛ばしてくれるかもしれません。
また、アメリカでは子どものうちから自分の意志で行動するように教えられ、そしてそれが尊重されます。自分が納得のできないことは「NO」とハッキリ言っても大丈夫なんです。
それが良いか悪いかは別として、自分が尊重されて育った子は他人も尊重できるようになるのではないでしょうか。
日本のように毎回空気を読んで我慢ばかり強いられて育つと、大人になってから他人にも我慢を強いる人間になってしまうような気がします。
発達障害をもつ子どもの中には自己肯定感が低く、劣等感を抱え、二次障害として「うつ」を発症してしまう子もいるので、特に気をつけてあげる必要があります。
なんで日本は生きづらいのか
島国だから多様性に疎い?
日本は隣国と繋がっていない島国なので、外国人の流入も他国に比べて少ないですよね。最近では外国人も増えて多様性についての理解が深まりつつありますが、他の先進国と比べるとまだまだ遅れています。
LGBT(セクシャルマイノリティー)だって最近の言葉のようですが、本当はずっと昔から日本にもいたはずですよね。
今から20年近く前の話にはなりますが、海外で知り合った日本人に海外に住んでいる理由を聞くと、「ゲイだと周りに言えない日本が息苦しかったから」と言っていました。
今では日本も随分変わりましたが、まだそんな時代の名残があるのかもしれません。
実は守られている?
学校の制服も最近では男女に関わらず、ズボンかスカートを自由に選べる学校も増えて来たようです。
しかし、靴下の長さや色、スカートの丈、髪の毛の色やヘアスタイル、へアゴムの色など、なんでこんなに細かいの!という厳しい校則があるところはあまり変わっていません。
個性を出す機会を潰されているようにも感じますが、ひょっとしたら元々は、着る物や見た目の違いで貧富の差が出ないようにという日本人の気遣いだったかもしれないと考えることもできます。
学力に応じて飛び級をしたり留年をすることがなく、全員が同時期に進級できることも、英語圏に住む外国人からすると不思議なことなんですよ。
能力がなければさっさと首を切られる実力主義の外資系企業と、定年まで安心して勤められる日本の企業との違いみたいですね。
陽気じゃない国民気質?
英語圏に住んでいる子ども達をみると、喜怒哀楽がはっきりしていて表情も豊かだと感じます。嬉しいときには飛び上がって喜びますし、意思表示をはっきりするので何を考えているのか分かりやすいです。
日本の子どもはどうかというと、全体的にやや控え目な感じがします。シャイというか、人見知りをするというか、特にパパママ以外の人に対して自分の気持ちを伝えるのが苦手な子が多いように思います。
留学カウンセラー時代の話ですが、日本人の子どもを受け入れてくれたカナダのホストマザーから、「日本の子どもは何を考えているのかよくわからない」「何をしてもあまり喜んでくれない」と言われたことがありました。
私からすると「シャイなだけ」なのですが、彼女が期待したリアクションからはほど遠かったようです。
日本人には「陽気DNA」が少ないのかもしれません笑
日本人が和を好んだり、繊細で、みんなと同じじゃないと不安になるのも、DNAレベルでの国民的気質なんじゃないかという気がします。
もちろん全員がそうではないですが・・・
国民性を表した例え話(エスニックジョーク)のご紹介
世界各地からの観光客を乗せた豪華客船が沈没しかけていますが、救命ボートの数が足りません。そこで船長は、乗客を海に飛び込ませるために各国からの乗客にこのように声をかけました。
アメリカ人の乗客には、「飛び込んだらヒーローになれますよ」
フランス人の乗客には、「消して海に飛び込んではいけませんよ」
ドイツ人の乗客には、「規則ですから飛び込んでください」
イタリア人の乗客には、「素敵な女性たちが海で泳いでいますよ」
・・・すると、みな海に飛び込んだそうです。日本人には何と声をかけたか分かりますか?
日本人の乗客には、「みんな飛び込んでますよ」
と声をかけたそうです。ジョークと言うよりホラーに感じるのは私だけでしょうか・・・
さいごに
発達障害の子どもは海外の方が生きやすいかについて考えてみました。
海外には海外の、日本には日本の良さがあり、足りない部分もあるというのが率直な感想です。
アメリカでは個性を尊重してくれるし自由もありますが、その責任を自分で負わなくてはならないという厳しい面もあると思うんですよね。医療費も高いし・・・
日本でも多様性が浸透してきているので、早く皆が生きやすくなる国になるといいですね。
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