【アメリカ人の本音】アメリカから銃がなくならない理由をわかりやすく解説

海外トピックス

ニューヨーク州バッファローのスーパーで起きた銃乱射事件からわずか10日後、テキサス州ユバルディーの小学校でまたもや銃乱射事件が起きました。

2人の教員と19人の子ども達、合わせて21名が亡くなる悲劇・・・亡くなった子ども達はもとより、子どもを持つ親の身になると、その悲しみは計り知れません。

今やアメリカでは銃によって亡くなる子どもが、交通事故で亡くなる子どもよりも多い事実があるにも関わらず、なぜ銃がなくならないのか疑問に持たれた方も多いのではないでしょうか。

個人的な見解も含め、わかりやすく解説します。

アメリカから銃がなくならない理由

憲法で認められている

現地のニュースや記事を読んでリサーチをしたり、何人かのアメリカ人の方から直接話を聞いた肌感覚では、「銃規制には賛成するけど、銃を所持できる権利は手放したくない」という考えの人が一番多いです。

アメリカでは、憲法修正第2条(Second Amendment)で、国民が銃を持つ権利を認めています。

A well-regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.

規律ある民兵は自由国家の安全にとって必要であり、武器を所持し、備える権利は侵害されてはならない。

アメリカ合衆国憲法修正第2条

アメリカでは「自分の身は自分で守る」という考えが根付いているため、銃を持つことは自分や家族の命を守るために必要なものだと考えている人が多いです。

1791年から認められている権利なので、もう違和感すら湧かないほど当たり前なのかもしれません。

ayuciel
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「上院は銃規制に妥協したけど私たちは憲法に妥協しない、あなたが銃規制に賛成ならあなたはもうアメリカ側ではない」というツイート。

自由や権利を侵害されることに非常に敏感な人ってアメリカには多い気がします。

ayuciel
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「銃を所持する権利は、アメリカ合衆国がカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そしてヨーロッパ全土を恒久的に苦しめている専制政治の狂気の闇に落ちるのを防いだものです。 そしてそれこそが、少数の独裁政治家があなたを武装解除したい理由です。 決してそれを忘れないで。」というツイート。

こちらも自分の武装が弱まることで政府のいいなりになりたくないという強い気持ちが表れていますね。

アメリカ独立への想い

アメリカは1776年7月4日にイギリスから独立しています。

アメリカの独立は市民の手によって勝ち取った革命だと言われていて、国王や貴族階級の存在しない、平等な世界を自分たちの力で手に入れたのです。

7月4日の独立記念日を、アメリカの人たちは今でもとても大切にしています。

「自分たちの先祖が血を流して戦った末にやっと手に入れた自由を手放してなるものか」という想いがあるようです。

治安が悪いので護身が必要

アメリカで昨年(2021年)に起こった、学校での乱射事件がどれだけあったかご存じですか?

26件です。

何処よりも安全であるべき学校で・・・です。

ちなみに自殺を除いた銃による全体の死亡者数は2万803人でした。(統計:gun violence archive)

これだけ多くの人々が銃によって命を奪われていると、護身用の銃が欲しくなるのも分からなくはないです。

でも、個人的には「身を守るためなら麻酔銃でもいいんじゃないの?」というツッコミをしたくなります。(名探偵コナンみたいに即効性のあるやつ)

自宅に銃を持った強盗が押し入ってきても、すぐに麻酔銃で眠らせて、その間に警察に通報すれば誰の命を奪うこともないですよね。途中で目が覚めたらもう一回撃てばいいだけですし。

・・・という提案を何人かのアメリカ人に話したのですが、イマイチ賛同は得られず(笑)

でも、「ライフルじゃなくてもいいよね」「小型な銃でいい」という意見はありました。

ちなみにユバルディーの小学校で銃を乱射した犯人(18歳)は、AR-15というライフルを使ったのですが、その年齢でこんな銃を手に入れることができる事がまず信じられないですよね。

出典:Wikipedia

また、どこに住んでいるか(治安が良いかどうか、田舎か都会か)によっても銃の必要性は代わってくる気がします。

治安の良い日本に長く住んでいると麻痺してくるのですが、アメリカの治安の悪い地域では窓に鉄格子がついているのが当たり前ですし、赤信号で停止しているときに車の窓を開けるなと言われたことも。

フィラデルフィアなんかだと、男の人でもひとりで歩くのは危険だと言われている地域があります。

大きな銃を持ちたがる人は恐怖心の裏返しなのかな、と考えることもできるのではないでしょうか。

とはいうものの、いくら「治安の悪い地域に住んでいるから」「家族を守りたいから」という理由で簡単にマシンガンを購入することができるのはやはり問題だと思います。

共和党が銃規制に乗り気ではない

アメリカの議会では、銃規制を進めたい民主党と、それに反対する共和党が対立しています。

まずはアメリカの2大政党について見てみましょう。

共和党(Republican Party)イメージカラー:赤
※共和党が強い州はRed Stateと呼ばれる
シンボル:ゾウ
理念:保守(市場を重視し、政府の介入を最小限に)
憲法修正第2条:個人の権利
民主党(Democratic Party)イメージカラー:青
※民主党が強い州はBlue Stateと呼ばれる
シンボル:ロバ
理念:リベラル(社会福祉や生活保護は政府の義務)
憲法修正第2条:州の権利

民主党と共和党では大きな理念の違いがあり銃規制に対する考え方も違うので、なかなか法案が通らないというわけなんですね。

ayuciel
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共和党の歴代大統領は、リンカーン、アイゼンハワー、ニクソン、レーガン、ブッシュ、トランプ。民主党の歴代大統領は、ウィルソン、ケネディ、カーター、クリントン、オバマ、そして現職のバイデンなどです。

それでも今は、ユバルディーでの銃乱射事件から世論を受けて状況が変わりつつあるようです。

バイデン大統領も協力な銃規制を要求しているほか、上院の超党派グループも銃規制に向けて前向きな姿勢を示しています。

合意されたこと

✔ 21歳未満の銃購入者の身元確認を厳格にする

✔ 裁判所が著しく危険と判断した人物から銃を没収できる法案制定の促進

✔ メンタルヘルスや学校の安全を強化するための資金援助

合意が得られなかったこと

✔ 殺傷能力の高い銃(突撃銃、10発以上の弾丸が収納できる弾倉)の販売禁止

ayuciel
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連邦レベルで銃制限が実施されるのはすごいことですが、銃による死亡者数を大幅に減らすことに繋がる制限ではないのが残念です。

こんな妥協案しか通らないようでは、アメリカから銃がなくなる日が来るなんて夢のまた夢という気がします。

アメリカのセレブは黙ってない?!

日本では芸能人が政治的な発言をすると炎上やバッシングを受ける風潮があり、あまり声を上げる人がいなくなりましたがアメリカは違うようです。

もちろんSNS上でバッシングを受けることはアメリカでも同様にあり、昔より自分の意見が言いにくい世の中になってきていることは事実ですが、「それでも構わないから自分の意見を言う」という人が日本より断然多いです。

アメリカ人俳優、マシュー・マコノヒー(映画「インターステラー」に出てた人)は、地元テキサス州ユバルディで起きた銃乱射事件を受けて、ホワイトハウスの会見場で22分間に及ぶスピーチをしました。

その内容は、亡くなった子ども達ひとりひとりを紹介し、銃規制を強く訴えるものだったのですが、スピーチを聞いていて胸が熱くなりました。

マコノヒー自身も銃は所有しているそうですが、悪人の手に銃が渡らないように規制をしようということですね。

(余談ですが英語では「マコノヒー」ではなく、「マカナヘイ」のように発音します。)

特にファンというわけではなかったのですが、スピーチを聞いたら好きになりました(笑)

ちなみにこのスピーチは殆どの人が好意的な受け止め方をしていましたが、中には「もう彼の出てる映画は観ない」とか「自分は銃を装備したボディーガードを引き連れているくせに」とか批判的なコメントをしている人もいました。

ayuciel
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「以前はマコノヒーを尊敬してたけどもうしない!だって彼は以前(共和党の)トランプ支持者だったのに今は民主党になってるし。銃反対のスタンスでテキサス州の知事の座を狙ってるなら見込みはないぜ」というツイートです。

一方で、こんなツイートも。

ayuciel
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「今週私が誰を冷ややかな目で見ているか知ってる? マシュー・マコノヒーの感情は偽物で全て演技であると言っている人。 こんなに悲劇的で泣けてくることが信じられないの? みんな共感性が欠けてるように思えるわ」
というツイートです。

マコノヒーは元々政治に興味があり、テキサスの知事選への出馬を検討したことも過去にあるくらいなので何か意図があるのではないかと思われるかもしれません。

実は私も最初はちょっと思いました。でも、彼のスピーチを見ていたらそんなゲスな推測なんて吹っ飛びました。正義感が強くて熱いハートと情熱を持った人なんだな~って。

マコノヒーに限らず、セレブリティーが自分の知名度や立場を利用して世の中をよくしていこうをいう動きはアメリカでは珍しくない気がします。

シャーリーズ・セロンも以前、チャリティー会場で「私たちが声を上げて弱い人達を助けなかったら、何のために有名になったか分からないじゃない」と言っているのを聞いたことがあります。

期待を裏切らないというか、かっこいいですよね。

まとめ

日本人の視点からみると、アメリカの人が銃を手放すどころか少々の規制をされることすら拒否する人が一定数いることに驚くと思います。

でもその背景には、アメリカの歴史や文化が深く関係しているんですよね。

それでも尚、日本人には理解が難しいところもありますが・・・

子ども達が学校で命を落とすことがなくなることを祈るばかりです。

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ワーホリ経験(オーストラリア・カナダ)のある元留学カウンセラーで、子ども英会話教室の現役講師。海外の文化、英語学習、日本にいながらバイリンガルを育成するための「おうち英語」など、様々なトピックスを発信中。双子男児を育てる傍ら「Wiser Than Yesterday(昨日より賢く)」をモットーに、大人になっても学び続ける姿勢を大切にしています。

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