メープルシロップは好きですか?
カナダの国旗にもあるサトウカエデという木の樹液を煮詰めた優しい甘さのシロップは、パンケーキにかけて食べたことがある人も多いのではないでしょうか。
実は世界中のメープルシロップの約3/4が、カナダのケベック州で作られており、このメープル産業は多くの収入や雇用を生み出しています。
カナダではパンケーキの他にも、様々な料理や飲み物にメープルシロップが使われているんですよ。
そんなカナダ人にとって欠かせないメープルシロップについて深掘りしてみました。
カナダのメープルシロップは日本でも大人気
メープルシロップの輸出先No.1はアメリカ、日本も上位
輸出先で半数近くを占めているのがアメリカですが、日本も3.4%のシェアを占めており、アメリカを除けば上位に入ります。
メープルシロップは日本人にも人気があるんですね。
参照: Global Trade Tracker(April2021)
人気の秘密は栄養価
はちみつや上白糖に比べ、カロリーも低く、多くのミネラルやビタミンが含まれています。
■主な栄養素
カルシウム・マグネシウム・タンパク質・亜鉛・カリウム・ビタミン・アミノ酸・ポリフェノール など
はちみつは1歳未満の赤ちゃんには与えられませんが(乳児ボツリヌス症を発症することがある)、メープルシロップは添加物や化学物質を一切含んでいない他、煮詰める過程で殺菌もされるため赤ちゃんからお年寄りまで安心して口にすることができます。
砂糖の代わりに幅広く使える
パンケーキやワッフル、ヨーグルトの上にかけたり、肉料理のソース、飲み物に入れても美味しいメープルシロップ。
独特の香りがあるため他の素材との相性を考える必要がありますが、私は本当によく使います。
我が家ではパンケーキの上にメープルシロップをかけるのではなく、生地の中に砂糖の代わりとして使います。かぼちゃ、小松菜、ほうれん草などのピュレを混ぜて一緒に焼けば、子どものおやつにも最適です。
でも、一番のお勧めは大学芋!
サツマイモをレンジでチンした後、バターとメープルシロップで炒めるだけ。シロップがカラメル状になって、とっても美味しいです。
メープルシロップって、糖分を多く含む炭水化物(バナナ、さつまいも、かぼちゃ、栗など)と相性抜群なんですよ。
木の多様性で高品質を作り上げる
オンタリオ州、ケベック州、ニューブランズウィック州、ノバスコシア州の4つの州は、高品質のメープルシロップを作る気候と、木の多様性に恵まれていて、メープルベルトと呼ばれています。
■主な木の種類
【木の名前(学名)】 | 【特徴】 |
サトウカエデ、ロックメープル(エイサー・サッカラム) | 日本のカエデと比べてかなり大ぶり |
黒カエデ(エイサー・ニクル) | シュガーメープルと関わりが深い |
赤カエデ(エイサー・ルブルム) | 最も一般的なカエデ |
メープル産業の歴史
先住民の手から移民へ
メープルシロップの生産がどのように始まったのかについては諸説ありますが、カナダ北東部の先住民が、春の最初の満月を祝う儀式にメープルシュガーやメープルシロップを使っていたと言われています。
その後、ヨーロッパからの移民に販売されると同時にメープルシロップの作り方も伝えられました。
1700年代後半、そのヨーロッパからの移民らにより樹液の収集方法や蒸発方法、輸送方法などが改善され、商業メープルシュガーの生産が始まります。
第二次世界大戦中、砂糖の不足のため人々は砂糖をメープル製品に置き換えることを勧められました。それにより劇的に売上が増加したと言われています。
メープルシロップができるまで
毎年雪解けの4月頃、カエデの木に穴を開け、樹液を容器に流すための器具を取り付け樹液を採取します。
樹液はシュガーハウスという小屋に運ばれ、採取後すぐに大きな金属釜で長い時間をかけて煮詰められます。
40リットルあった樹液も、シロップとして完成する頃には僅か1リットル。
水のようにさらさらした状態から、煮詰めることによりとろみがつき、色も黄金色に変わります。
これを更に煮詰め続けることによってできるのが、メープルシュガーです。
メープルシロップ窃盗事件
ケベック州の高品質のシロップは、金の液体であることで知られています。1バレルあたりの価格は石油の約25倍(時期によって変動)もの価値があると言われていますから大変貴重ですね。
2012年に、ケベック州で保管されていたメープルシロップ3000トン近く(推定1800万ドル相当)が盗まれるという事件がありました。
メープルシロップの入った樽から中身だけを盗み出し、代わりに水が入れられていたため、樽の一部がサビだすまで事件が発覚しなかったそうです。
警察の必死の捜索により、26人を逮捕することができましたが、全てのメープルシロップが回収されることはありませんでした。
メープルシロップ界のOPEC?!
需要の増加や気温により、メープルシロップ供給が追いつかなくなると、ケベック・メープルシロップ生産者協会(QMSP)により緊急事態用のメープルシロップ備蓄が放出されます。
つい先日も約3年ぶりに貯蔵分のメープルシロップが放出された事が報道されていました。
QMSPは既に2022年の収穫に向けて計画を立てており、700万本の木から追加で収穫する方針だという事です。
安定した供給ができるのは、QMSPのおかげなんですね。QMSPが、メープルシロップ界のOPEC(石油輸出国機構)と呼ばれているのも納得です。
メープルシロップのグレードと保存方法
メープルシロップは、樹液が採取された時期によって風味や色合いが異なります。
採取時期が遅れるほど糖度が低くなり、長く煮詰める必要があるため色が濃くなっていきます。
ゴールデン | 黄金色で繊細な味わい |
アンバー | 琥珀色で豊かな独特の味わい |
ダーク | 暗い色で、よりしっかりとした味 |
ベリーダーク | 非常に暗い色で、主張の強い味 |
私がよく使うのは、ゴールデンとアンバーです。ベリーダークは日本の店頭で見かけたことがありません。
はちみつは開封後も常温で保存できますが、メープルシロップは開封したら冷蔵庫で保存しましょう。
水分が多いので、開封後は冷蔵庫に入れないと雑菌が繁殖しやすくなります。
開封前は、暗くて涼しい場所に保管しておけば大丈夫ですよ。
まとめ
いかがでしたか?
カナダのメープルシロップについて深掘りしてみました。
美しい自然と、シロップ作りに適した気候、そしてヨーロッパからの移民による努力と改善によって栄養たっぷりのおいしいメープルシロップが出来上がるんですね。
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